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“かしょう”ぶんか

“歌笑”文化

坂口 安吾

「中央公論 第六五年第八号」1950(昭和25)年8月1日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,196 字 · 7 页

青空文庫

しかし、落語家が、歌笑をさして漫談屋だとか、邪道だというのは滑稽千万で、落語の邪道なんてものがあるものか。落語そのものが邪道なのだ。

落語が、その発生の当初においては、今日の歌笑や、ストリップや、ジャズと同じような時代的なもので、一向に通でも粋でもなく、恐らく当時の粋や通の老人連からイヤがられた存在であったろうと思う。つまり、最も世俗的なものであり、風流人の顔をしかめさせた湯女的な、今日のパンパン的現実の線で大衆にアッピールしていたものであったに相違ない。

それが次第に単に型として伝承するうちに、時代的な関心や感覚を全部的に失って、その失ったことによって、時代的でない人間から通だとか粋だとかアベコベにいわれるようになった畸型児なのである。

明治、それから、大正、昭和という途方もなく飛躍的な時代を経過して、昔の型から一歩もでることができずに、大衆の中に生き残ろうなどとムリのムリで、粋とか通とかいわれることが、すでに大衆の中に生きていないことのハッキリした刻印なのだ。大衆の中に生きている芸術は、常に時代的で、世俗的で、俗悪であり、粋や通という時代から取り残された半可通からはイヤがられる存在にきまったものだ。