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「ああしんど」

「ああしんど」

池田 蕉園

「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂、1911(明治44)年12月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 660 字 · 2 页

青空文庫

よっぽど古いお話なんで御座いますよ。私の祖父の子供の時分に居りました、「三」という猫なんで御座います。三毛だったんで御座いますって。

何でも、あの、その祖父の話に、おばあさんがお嫁に来る時に――祖父のお母さんなんで御座いましょうねえ――泉州堺から連れて来た猫なんで御座いますって。

随分永く――家に十八年も居たんで御座いますよ。大きくなっておりましたそうです。もう、耳なんか、厚ぼったく、五分ぐらいになっていたそうで御座いますよ。もう年を老ってしまっておりましたから、まるで御隠居様のようになっていたんで御座いましょうね。

冬、炬燵の上にまあるくなって、寐ていたんで御座いますって。

そして、伸をしまして、にゅっと高くなって、

「ああしんど」と言ったんだそうで御座いますよ。

屹度、曾祖母さんは、炬燵へ煖って、眼鏡を懸けて、本でも見ていたんで御座いましょうね。

で、吃驚致しまして、この猫は屹度化けると思ったんです。それから、捨てようと思いましたけれども、幾ら捨てても帰って来るんで御座いますって。でも大人しくて、何にも悪い事はあるんじゃありませんけれども、私の祖父は、「口を利くから、怖くって怖くって、仕方がなかった。