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あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいじっかん)

あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)

宮本 百合子

「宮本百合子選集 第十巻」安芸書房、1949(昭和24)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,796 字 · 18 页

青空文庫

一九三〇年の暮にソヴェト同盟から帰って来て、翌年「ナップ」へ参加するまで、わたしは評論、紹介めいたものを書いたことがなかった。また、人の前に立って、文学についてそのほかの話をしたという経験もない。そして、それを自分の気質と思っていた。

ところが、この枠はまず思いがけない機会からモスクワで打ち破られ、段々わたしは自分の文学活動の範囲に、小説よりほかのものをうけ入れるようになって行った。わたしの場合、それはあきらかに作家としての社会性の拡大であり、また進歩的な文学者の良心的義務の一つであるという自覚であった。

一九三一年、一月号の『ナップ』に「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」をかきはじめてから、わたしの評論的活動がはじまった。

選集第十巻に収められている文学評論は、一九三一年から三六年(昭和六年――十一年)ごろまでの間にかかれたものである。その一つ一つを、こんにちわたしたちが民主主義文学運動のなかにもっている諸問題とてらしあわせてよむとき、深い興味があるばかりでなく、むしろ駭然とさせられるところがある。この一巻に集められている二十数篇の評論、批評は、理論的に完成されていない部分や、展開の不十分な面をふくんでいるにもしろ、日本の人民階級の文学、人間解放のため文学がもっている基本課題をとりあげ、それを正当に推進さ