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あのころ
あのころ
上村 松園
――幼ものがたり――
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,743 字 · 10 页
ところが、京都のどんどん焼きとも言い、また鉄炮焼きとも言って有名な蛤御門の変で、隣の家へ落ちた大砲の弾から火事を起こし、その質蔵も類焼し、一家は生命からがら伏見の親類へ避難したのでした。
そのときは母の仲子は十六、七でしたが、そのときの恐ろしさをときどき話していられました。
元治元年の年のことであります。
間もなく四条御幸町西入奈良物町に家をたてて、そこで今度は刀剣商をはじめました。
参勤交代の大名の行列が通るたびに、店には侍衆がたくさん立たれて、刀や鍔を買って行ったそうで、とてもよく流行ったそうです。
また帰国のときには子供用の刀や槍がどんどん売れたそうで、これは国表へのお土産になったのであります。
葉茶屋
それも間もなくのことで、御一新になり、天子様が御所から東京の宮城へお移りになられたので、京都は火の消えたようにさびれてしまい、廃刀令も出たりしたので、刀剣商をたたんでしばらくしもたやでくらしていましたが、母の仲子が養子を迎えたので、それを機会に葉茶屋をひらきました。養子の太兵衛という方はながらくお茶の商売屋に奉公していたので、その経験を生かそうとしたわけであります。