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あのかお

あの顔

大倉 燁子

「ロック 三巻六号」1948(昭和23)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,009 字 · 22 页

青空文庫

「それが当然ですよ」

「やはり夫の愛が私から去っているのを感じないわけにはゆきません。彼の外泊は近頃ではあたりまえの事のようになってしまいました。夫は最初私に妾のある事をひしがくしにしていたものです、私が利口者か、世間を知っている者かだったら、ひしがくしにしているのをほじくりもしなかったでしょうし、素知らぬ顔で見て見ぬふりもしていたでしょうが、私は嫉妬にかられて何の考えもなく、何もかも知っているぞ、と、云って、夫が閉口しているのを見て痛快がっていたものです」

「一時は胸がせいせいして愉快だったでしょうが、結果はよくなかったでしょう?」

「悪るかったことを後に知りました。濡れぬうちこそ露をもいとえで、男は知れたとなると開き直る者だということを私は知りませんでした。夫はもう平気で私の前で妾ののろけも云うし、私と比較して妾の事を褒めたりするのです、私はひどく侮辱されたような気がして、その度に夫と喧嘩をし、口論の絶え間がなかったんです。そのうちに玉のような女の子が生れたとききました。気に入っている女に出来た自分の子です、彼はもう殆ど家へは帰らず、妾の処に入り浸ってしまいました」