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あるニュー・フェイスへのてがみ
あるニュウ・フェイスへの手紙
岸田 国士
「演劇 第一巻第一号~第七号」1951(昭和26)年6月1日~12月1日、「演劇 第二巻第一号~第二号」1952(昭和27)年1月1日~2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,146 字 · 96 页
なるほど、舞台の才能も才能ですが、その才能が目につかぬような、あの自然な姿態のかもしだす魅力、年などは問題にならぬような、あのみずみずしい女性的な香り、しとやかで、キリリとして、物憂げで、どこか茶目ッ気もあるという風な複雑な人物像を、どんな女優があんなに自然に現わし得るか、ということを僕は考えました。
ところが、最近僕は、偶然、ある機会にこんな事実があったことを知りました。それは、あの変りもののマルセル・プルウスト、生涯を独身で通し、雇人にも一切女ッ気を加えなかったといわれるプルウストが、社交界を遠ざかってからも、レジャンヌ夫人の楽屋へは始終顔を出し、あたかも取巻の一人のように、自ら彼女の崇拝者たることを公言し、彼女に近づく口実を作るために、彼女の息子を自分の家に同宿させていた、というのです。
僕は、この話をこういう風に解釈したいのです。
プルウストは、別に、ジイドのようなポーズのある作家ではありません。彼は、自分の女性関係を特別な意味で問題にする筈はない。一口に言えば、彼は、非常に、「女」には贅沢な人物のように思われるのです。まったく、プルウストの気に入るような女とは、どんな女か、パリ広しといえども、そうざらにはいなかった、ということになりませんか?