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あるなつのひのこと
ある夏の日のこと
小川 未明
「女子青年 24巻8号」1941(昭和16)年8月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,545 字 · 3 页
姉さんは、庭前のつつじの枝に、はちの巣を見つけました。
「まあ、こんなところへ巣を造って、あぶないから落としてしまおうか。」と、ほうきを持った手を抑えてためらいましたが、
「さわらなければ、なんにもしないでしょう。」
せっかく造りかけた巣をこわすのもかわいそうだと考え直して、しばらく立ち止まって、一ぴきの親ばちが、わき見もせず、熱心に小さな口で、だんだんと大きくしようと、固めていくのをながめていました。そのうちに、はちはどこへか飛び去りました。なにか材料を探しにいったのでしょう、しばらくすると、またもどってきました。そして、同じようなことをうまずに繰り返していました。
「このはち一ぴきだけだろうか。」
彼女は、同じ一ぴきのはちが、往ったり返ったりして、働いているのしか見なかったからです。
「勇ちゃんに、だまっていよう。」
見つけたら、きっと巣を取るであろうと思いました。
姉さんは、すわって、仕事をしながら、ときどき思い出したように、日の当たる庭前を見ました。葉の黒ずんだざくろの木に、真っ赤な花が、点々と火のともるように咲いていました。そして、水盤の水に浮いたすいれんの葉に、はちが下りて止まっているのを見ました。