轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あるげんそうきょくのじょ

ある幻想曲の序

寺田 寅彦

「明星 第四巻第二号」1923(大正12)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,286 字 · 3 页

青空文庫

一

一

何もない空虚の闇の中に、急に小さな焔が燃え上がる。墓原の草の葉末を照らす燐火のように、深い噴火口の底にひらめく硫火の舌のように、ゆらゆらと燃え上がる。

焔の光に照らされて、大きな暖炉の煤けた空洞が現われる。焔は空洞の腹を嘗めて頂上の暗い穴に吸い込まれる。穴の奥でひとしきりゴオと風の音がすると、焔は急に大きくなって下の石炭が活きて輝き始める。

炉の前に、大きな肘掛椅子に埋もれた、一人の白髪の老人が現われる。身動き一つしないで、じっと焔を見詰めている。焔の中を透して過去の幻影を見詰めている。

焔の幕の向うに大きな舞踊の場が拡がっている。華やかな明るい楽の音につれて胡蝶のような人の群が動いている。

焔が暗くなる。

木深い庭園の噴水の側に薔薇の咲き乱れたパアゴラがある。その蔭に男女の姿が見える。どこかで夜の鶯の声が聞える。

石炭がはじけて凄まじい爆音が聞えると、黒い煙がひとしきり渦巻いて立ち昇る。

物恐ろしい戦場が現われる。鍋の物のいりつくような音を立てて飛んで来る砲弾が眼の前に破裂する。白い煙の上にけし飛ぶ枯木の黒い影が見える。

戦場が消えると、町はずれの森蔭の草地が現われる。