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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

「君、馬鹿に構わない方が宜いよ」

と僕も痛かったので涙を流しながら、早川君を宥めた。

「大抵僕のところの小作の子だ。増長していやがるから、兄さんに言って、しょびき出して貰う」

「矢っ張り東よりも西の方が分らないんだね」

「そんなことはないよ」

「でも、あんな奴等がいる」

「東にだっているぜ」

「いないよ。来て見給え」

「君は西を馬鹿にするのか? 何だい?」

「二人で喧嘩をしちゃ駄目だよ。お手本にならない」

「成程。それはそうだけれど」

「僕は頭が未だ痛い」

「僕も痛い」

早川君は金持の末っ子で、甘く育っているから、我儘なところがあった。成績も優秀でなかった。尤も僕だって余り威張れない。二人はいつも恨みっこなしに級の中軸を占めていた。勉強したところで総理大臣になれるものでもなしと、口には出さなくても、肚の中で悟っていたのだろう。教室では一向注意を惹かない。そういうのに限って、家へ帰ると大いにやる。僕達はその組だった。三年四年と級が進むにつれて、益※(二の字点、1-2-22)馬が合う。東西引佐和合の模範として可なり尽した積りだ。しかし僕の村の小学校の校長先生は次のような註文をつけた。