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あるおんせんのゆらい

ある温泉の由来

佐々木 邦

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1936(昭和11)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,655 字 · 30 页

青空文庫

皆それ/″\の関係で交渉を持っている。芝居、活動館、カフェー、村の青年の好奇心を惹くものが多い。その○○町へ出る関門が仲の悪い西引佐だから厄介だ。時折、売り言葉に買い言葉の花を咲かせると、奴等は仲間を集めて帰りを待っている。

しかし西引佐のものも東引佐を通らなければならないことがある。それは山へ行く時だ。夏分、山から雑木を伐って来て、一年中の燃料を貯える。これが若い衆の仕事の一つになっている。早朝出掛けて行って、帰りには日が暮れる。一日の稼ぎ高を荷車につけて東引佐へ差しかゝると、

「おい、そこへ行くのは西の兄いか?」

と呼び止められることがある。

「今晩は」

「今晩じゃない。この間の晩の話だ。覚えがあるだろう?」

「俺は知らない」

「手前の仲間が待ち伏せをして、おれ達に因縁をつけた。さあ」

「何うする?」

「痛い目を見たくなければ、荷を悉皆下して、おっ走れ」

「兄貴達、それは些っと無理だろう。俺等方は何も手出しはしなかった。股ぐらを潜らせた丈けだ」

「見ろ。知っているくせにして。さあ。股ぐらを潜って行け」

「仕方がない」

と西の若い者も東の領分へ入っていると考える。