轻松读懂日语经典作品
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いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
「サンデー毎日臨時増刊仲秋特別号」毎日新聞出版、1952(昭和27)年10月19日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,304 字 · 45 页
飲ませてやると、美味そうにたっぷり飲んだ。
「気分はどうだ、なんともないか」
「――ずっと、いて下すったのね」
「これだからね」保馬は握られている手を振ってみせた、「ずっと放さないんだぜ」
いしは唇で笑った。保馬はそっといしの胸を指して云った。
「まだここになにか残っているかい」
いしは保馬を訝しそうに見た。それからゆっくりと頭を振り、かすれた低い声で、保馬をじっと見つめながら云った。
「――みんな出ちゃいました」
「残ってるものはないんだね」
「――ええすっかり……からっぽです」
保馬は頷いてみせた。するといしの手に力がはいって、彼の指を痛いほど緊めつけた。いしの眼から涙がこぼれ落ちた。
――外島が来るかもしれない。
こう思ったので、堀と仲田に警戒を命じた。外島がどこへ逃げるにしても、いちどはいしのところへ来るに違いない。必ず来るだろうと思った。しかしその夜はなにごともなく、静かに明けていった。
朝になってから、外島のことがわかった。彼は三人の浪人者といっしょに「えびす丸」という船を奪って逃げたのである。それは八幡屋の持ち船であったが、外島ら四人は刀を抜いて船頭を威し、そのまま海へ逃げたそうである。