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おきくとおとうと

おきくと弟

小川 未明

「国民新聞」1931(昭和6)年2月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,188 字 · 5 页

青空文庫

空が曇っていました。

正ちゃんが、学校へゆくときに、お母さんは、ガラス戸から、外をながめて、

「今日は、降りそうだから雨マントを持っておいで。」と、注意なさいました。

「じゃまでしかたないんだよ。もしか、降ったら、一、二っと駈けだしてくるから。」と、答えて正ちゃんは、すなおにお母さんのいうことをききませんでした。

どこか、曇った空にも明るいところがあって、すぐに降りそうに思われません。お母さんは、新聞の天気予報には、どうなっているかとそれを見ようとなさっている間に、もう正ちゃんは、家を飛び出して、門を曲がってしまった時分であります。

「やはり、くもり後雨とある。なぜこう、いうことを聞かない人でしょう……。」と、お母さんは、ひとり言をされました。

まだ、正午にもならぬうちから、はたして雨は降り出しました。はじめは細かで、目にはいらぬくらいでしたが、だんだん本降りになってきました。いくら元気な正ちゃんでも駈け出してくるわけにはいかないのです。

「おとなしく、雨マントを持っていってくれればいいものを……。」

お母さんは、子供の身の上を心配なさいました。そして、もう学校の退ける時分に、女中に向かって、