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おさらいちょう

おさらい帳

小川 未明

「教育・国語教育 5巻11号」1935(昭和10)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,731 字 · 4 页

青空文庫

きょう紙芝居のおじさんが、じてん車をほったらかして木の下で、道具屋のおじさんと将棋をさしていましたよ。」と、話しました。

「ああそうか。あすこは涼しいからな。将棋をさしたり、ひるねをしたりするのにはいいだろう。」と、お父さんはわらわれました。

「紙芝居のおじさんは、なまけていけませんね。」と、正ちゃんは、まじめになっていいました。

これをおききになったお母さんは、おかしくてたまらぬように、

「まあ、自分のなまけることはわからずに、ひとのなまけることはよくわかるんですね。」と、おわらいになりました。

学校がはじまって、だんだん涼しくなると、みんなは勉強にせいを出さなければならなくなりました。

ある日、正ちゃんのおさらい帳をごらんになったお母さんは、おどろいて、

「わからないところはみんな書いてないのですね。書いてあるところも、いくつかちがっているじゃありませんか。」といって、正ちゃんをおしかりになりました。

正ちゃんは自分が悪いと思ったときは、だまっていました。

「なぜ、わからないところはお姉さんにでもきかないのですか。」

お母さんはこのことを、お父さんにいわぬわけにはまいりませんでした。