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おばあさんとツェッペリン

おばあさんとツェッペリン

小川 未明

「童話文学」1930(昭和5)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,480 字 · 7 页

青空文庫

あんなものに、なぜ人間は乗るのか、また落ちなければいいがのう。」と、おばあさんは、うつむきながらいわれました。

子供たちは、おばあさんのいうことを聞いて、わけもなくおかしがりました。

「おばあさん、飛行機は、汽船よりも、汽車よりも速いんですよ。あれに乗れば、一日で、北海道から、九州までも飛べるんです。これからの戦争は、飛行機になりますよ。」

こう、孫たちが説明すると、おばあさんは、だまって聞いていられました。そして、ふと頭の中に、昔、雑誌の口絵で見た、軽気球の上がっている光景が、ありありとして、映ったのであります。

あたりは、静かでした。庭さきには、日があたっていました。ちょうど、その日は、こんなような日であったが、なにもかも、すぎ去って、二十年も、三十年も、前になってしまったのでした。

そのころは、自分も、どんなに働きがいがある、目も耳も手も足も達者で、なすことが楽しかったか? そんなことを考えると、おばあさんは、悲しくなって、しわの寄った目じりに涙がにじんできたのです。

当時から見ると、なるほど、世の中は進歩したが、のんびりとしたところがなくなって、暮らしづらくなりました。