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おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,479 字 · 45 页

青空文庫

山でなにかあったに相違ないと思い、節子はかなりきつい調子で、いったい、尾花沢でなにが行なわれているのか、危険とはどんな種類のものかということをきいた。

「どうぞ本当のことを聞かせて下さいまし、なにも知らずに心配するよりは、知っていてがまんするほうが気持が楽ですわ、そうでないとわたくしもう、不安で不安で……」

「よろしい話しましょう、これは藩の厳重な秘事なんですが、あなたには知っておいてもらうほうがいいかもしれない」

彼はこう云って話しだした。

時間がないためごく簡単ではあったが、それはかなり重大な意味のあるものだった。ずっと昔から大仏山のどこかに砂金鉱があるといわれていた。まえまえから領主の変るたびにずいぶん捜していたらしい、こんども三代まえに移封して来てから、ときには江戸から専門家まで呼んで手を尽して探ったがわからなかった。――

それが去年の冬のかかりに、ほんの偶然なことから発見のいとぐちがついた。城下に、丸庄という呉服雑貨商がある。古くから地つきの富豪で、藩の金御用を勤めていたがその店でひそかに砂金の売買をしていることがわかり、主を調べたうえ、店へ売りに来た男を捕え、その所在を知ることができたのである。