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おしげ
お繁
山本 周五郎
「アサヒグラフ」 1935(昭和10)年10月12日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,857 字 · 14 页
二
その村でいちばん汚い子供、乞食阿魔、墓場に供えた飯や菓子を喰う穢れたやつ、――それが繁あねだ。体じゅう腫物だらけで、胸のところは膿のために着物がはり着いてとれなくなっている。いつもどこかの粗朶置場か納屋に寝る。風呂へはいることなどはむろんないし一年じゅう顔を洗うこともない、虱だらけである、――それがこのお繁なのだ。
それにしては、わたしの見た彼女の体の一部がなんと美しかったことだろう。ほんの一刹那の仰視ではあったが、わたしの眼には今でもはっきり印象が遺っている。そこはまさに少女期からぬけようとするふくらみをみせていた、両腿のなめらかな肌がぴっしり合さるところはごく微かに色づいていたし、膝頭から踵へとながれる内側の線は、すんなりとまるみをもって匂やかにまでなまめかしかった。しかもそれは成長しつつあるものだけがもつ神聖な美しさに包まれているので、たとえどこまであからさまになったとしてもけっして人に猥がましい感じは与えなかったに違いない。
二
お繁は数年前に、生後百日に満たぬ妹とともに親たちから捨てられた。
お繁の父親は銀太郎といって漁夫だった。銀太郎は磯釣りの名人で、どんな者も彼の腕には及ばなかった。