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おさかなじょし

お魚女史

坂口 安吾

「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页

青空文庫

年寄の方がいゝことよ。人間みたいじゃないでしょう。ドラムカンだのアキビンだの、そんなものと大して違いはないものなのよ。人間なんか、いやらしいわね、ねえ、先生。先生も、エロですかア。アラ、いやだア、キャーッ」

その防空壕なら、私もよく知っていた。この界隈随一の名題の壕で、戦争中は岡焼き連の悪評高く、バクダンに追いまくられていた私なども、フテエことをしやがると横目に睨んでいたものであった。

疲れきっていた私は、酔っ払って、先に寝床へもぐって眠ってしまったが、弁吉はお魚女史を送って、防空壕まで参観に赴いたそうだ。

すると、井戸が遠くって、拭掃除ができなかったのよウ、と云って、弁吉にバケツの水を運ばせて、コンクリートの上下四方ていねいに拭かせ、水を一滴こぼしても、コラ、なんてことするのよ、地上建築と違うよ。衛生が判らないの、マヌケモノ! と叱りつけ、それでも湯を沸して、お茶をついでくれて、

「ハイ、御苦労さま。あんたは一つでタクサンだ」

と、まずそうな大福をひとつ皿にのせてくれて、自分はヨーカンだのカノコだのと大きな菓子皿からとりだして食べている。

「ボクにもヨーカンおくれよ」