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くちなし
くちなし
宮本 百合子
「中央公論」1938(昭和13)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,907 字 · 8 页
ヤーホーじちちゃんが痛々したんですよ。すると男の児は、殆ど泣きそうに力を入れて、ちがうったら違うよ! と強情にその反対を主張するのである。
手紙を貰って心痛をしている若い叔母が、愉快でない面持で、妙な小僧! と云った。いやに訳が分らないんだね。本当にね、どうしたんだろうと子供の母親も考えていたが、何かに思い当ったようなばつのわるい表情になり、目にとまらないほど顔を赧らめた。そして誰にともなく、余りいつも負けるのは支那の兵隊さんときめて遊んだりばっかりしているからなんだわ、きっと、と四つの子供心に植えこまれている偏見について説明した。
婦人画家
茶の間で、壁のところへ一枚の油絵をよせかけて、火鉢のところからそれを眺めながら、画中のドックに入っている船と後方の丘との距離が明瞭でないとか、遠くの海上の島がもう一寸物足りないとか素人評をやっていると、女ながらもそういう画材を勉強している友達が、考えると船なんてぼろいなあ、と百円の絵一つをさばきかねる婦人画家の生活を比較した。
現在はまだ所謂有名になっていないでも、これはと目星をつけた男の画家の絵を、コレクションとして買っている人は決して無くはなかろう。