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くちなし
くちなし
宮本 百合子
「中央公論」1938(昭和13)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,907 字 · 8 页
小説と絵とのちがいどころでもあろう。けれども、そういうような便宜な習慣とでも云える仕来りのために、婦人の洋画家の芸術成長の可能性やそれに対する期待が一般にひくめられているとすれば、やっぱり残念だと思う。まして、大局ではマイナスの作用をしつつ、目前ともかくプラスである協力者をもたず、或は良人と自身との画境をはっきり弁えて自力の成熟をしようと心がけている若い少数の婦人画家たちは、現在の常識ではどっちを向いても損であり苦しいということになる。
日本ではマダムの道楽も、大体は未だ少女歌劇の女優をひいきにするに止っているのであろうか。
波間
東海道線を西の方から乗って来て、食堂などにいると、この頃の空気が声高な雑談の端々から濛々とあたりを罩めている。儲けたり、儲けそこなったりの話である。
或るカイタイ会社が北海道のどこかで暗礁にのりあげて三年の間ゆらゆらしていた五千トンの船を二万円で買った。ドックに入れて、四十万かけて底をはりかえた。そして、二十万円に売った。
ドック料が一日五千円ばかりで、ドック側から云えば、なるたけ頻繁に船の出入りがある方がいい。