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このしょとう
この初冬
宮本 百合子
「中外商業新報」1939(昭和14)年12月2、3、5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,558 字 · 8 页
綺麗にちがいないのだけれど、竹を添えられ、強いてもためられている花の姿は窮屈である。あたり前に咲いているのはないのかしら。そんなことを云いながら、ぶらりと椎の大木の下にある門をくぐって別の庭へ歩みこんで、私共は急にばつのわるいような顔つきを合わせた。春の頃は空の植木鉢だの培養土だのがしかし呑気に雑然ころがっていた古風な大納屋が、今見れば米俵が軋む程積みあげられた貯蔵所になっていて、そこから若い棕梠の葉を折りしいてトロッコのレールが敷かれている。台の下に四輪車のついたものが精米をやっている米屋の裏の方へつづいているレールの上に置いてある。米俵はそれで運搬されている様子である。米のことが皆の心配の種になって、来月から七分搗と云われていた時、この米屋の前を通ると夜十二時頃でも煌々と電燈の光を狭い往来に溢らせていた。モーターが唸って、小僧は真白けになって疲れた動作で黙りこくって働いていた。ズックの袋に入れて札をつけた白米が店の奥に山とつまれた。馬力で米俵が運ばれて来たりした。東京市内だけでも一日に何軒とかの割合で米屋が倒れて行く。そういう話がある折であったから通りすがりに見るこの米屋の大活況は何となし感じに来るものがあるのであった。