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しいたげられたてんさい
しいたげられた天才
小川 未明
「白象 第1冊」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,087 字 · 9 页
その、こうごうしい、孤独の姿は、いつも秀吉に、なにか限りない、あこがれの感じをいだかせるのでした。そして、これから、彼の訪ねようとする学校は、このとき、ひからびた白い屋根を、目の下に見せていました。
「君は、歌が好きなのか、それとも、音楽が好きなのか。」と、頭の髪を長くして、うしろへなでおろした、まだ若い先生が、聞きました。
「さあ、どちらかなあ。」と、秀吉は、口ごもって、彼は顔を赤くして、最初の質問に、自分がわからなくなりました。
(男は、なんでも、思ったことは、いうのだぞ。)と、祖父の、日ごろのいいつけが、浮かびました。
秀吉は、顔をあげて、先生を見ながら、
「どちらも好きなんです。いい音のするものなら、水の音でも、風の声でも、好きなんです。先生、それは、やはり、音楽じゃないんですか。」と、秀吉はしんけんな目つきをして、先生に、ただしました。
「は、は、は。なんでも好きか、なかなか、君は欲ばりだな。しかし、音楽は芸術のうちでも、いちばんむずかしいのだ。天才ならばべつとして、学ぶには、うたうのも、鳴らすのも、基礎となる調子から学んで、練習が、たいへんなのだ。