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しいたげられたてんさい
しいたげられた天才
小川 未明
「白象 第1冊」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,087 字 · 9 页
ちょうど、文章を作るにも、文法を知らないと書けないように、好きだからといって、すぐになれるもんじゃないのだよ。」と、先生にいわれました。
このもっともらしく聞こえた、先生の言葉は、秀吉を真っ暗な絶望へつき落としました。
「好きだけでは、だめでしょうか。」
「まず、だめだな。しかし、君はたいへん熱心だから、せめて、耳だけなりと発達させるといい。僕も、君のことは考えておこうよ。」と、人のいい先生は、まずしげな少年をあわれみながら、こういって、なぐさめてくれました。
秀吉は、出かけるとき、胸に描いた、桃色の希望の影は、どこかへ消えて、家へもどるときは、失望の底を歩くように、運ぶ足が重かったのでした。ただ、先生の考えておいてくださるという言葉に、はかない望みをかけていたのであります。
その翌日から、彼はまた山へてつだいに出かけました。そして谷川の流れへくれば、いつに変わらずよかったし、林でなく小鳥の声を聞けば、無条件で自然が讃美されるのでした。
「だが、学問がなくては、まだほんとうのことは、わからぬのだろうか。」と、彼は、急に元気がなくなり、気持ちが重くなるのでした。