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そのひからしょうじきになったはなし

その日から正直になった話

小川 未明

「赤い鳥」1927(昭和2)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,341 字 · 7 页

青空文庫

「自分のうそは、けっして、悪いうそではないのだが、それでも、いってはいけないものだろうか?」と、少年は、自分の心に向かって、たずねました。

「それは、いけないにきまっている。うそをつくのは、人間として、卑怯なことだ。」と、自分の心と思われない、なんだか年とった、太い声が答えます。

このとき、同時に、それを打ち消すように、自分より、ずっと勇敢な、いきいきした、やはり、それも自分の心と思われないような声が、

「そんなうそは、いったってさしつかえない。小説でも、文章でも、みんな、うそのことを真実らしく書いてあるのじゃないか……。」といいました。

少年は、この二つの異なった、自分の心のどちらに従ったがいいか迷ってしまいました。

「小説はうそをつくものだということはわかっているが、おまえのいうことがうそだとわかれば、だれもおまえを信じなくなるだろう。」と、年とった太い声がいいました。

こうして、少年は、つねに、自分の良心をとがめながら、気が弱いので、ついみんなを笑わせたり、喜ばせたりしたいために、うそをつく癖を改めることができなかったのでした。

そのうそは、無邪気なものであっても、それをほんとうにした人は、あとでうそということがわかると、ばかにされたと思った。