轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あじさい

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集

佐藤 春夫

佐藤春夫『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あじさい、幽香嬰女伝、化物屋敷、緑衣の少女、私の父が狸と格闘をした話、幽明、柱時計に噛まれた話。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 页

青空文庫

よく見ようとした時には、もう何もなくただ洋服箪笥のほの白い扉だけであった。

もしそんなことを云い出せば、みんなが気味悪がるだろうと思ったから、わたくしはその時は誰にも何も云わないでいた。わたくし自身はと云えば、多少はへんに思ったものの別だん気味が悪いというほどの感じもなく、何か光と影との織りなす作用と自分の眼のせいだろうぐらいにあっさり見過していたものであった。

そのまま半月あまりも過ぎたろうか。ひとり女と聞いていた先方の女子も嫁に出してもいいという親たちの意嚮もたしかめ、適当な相手と見きわめもついて、せがれの縁談はごく順調に自然に進行しているように思えるころ、秋もようやく更けた或る夜、これは宵の口ではなく夜半であった。老来小便の近くなっているわたくしは尿意によって眼がさめて、まだ起き上りもせず、ただ手を延べて枕もとの電燈をともした瞬間であった。何気なく自然に眼を向けた便所に通う扉と妻のベッドの頭板のすぐそばに扉のつけ根の壁に寄りかかってひとりの若い女がいるのがはっきりと見えるのであった。この時は電燈の光にも近くぼんやりと見えるのではなく、ほのかながらも電燈の光をまともにうけた顔の目鼻立ちから何やら疲れたらしい表情まで見えるのであった。