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あじさい

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集

佐藤 春夫

佐藤春夫『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あじさい、幽香嬰女伝、化物屋敷、緑衣の少女、私の父が狸と格闘をした話、幽明、柱時計に噛まれた話。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 页

青空文庫

いよいよ自分の部屋へ入る段になるとどうしてもひとりでは入れなかった。人々を同伴して入る時でさえもそれは自分の居室へ入るというよりは何か他人の密室へ侵し入るような緊張した不気味なやましいに似た気持がしてならないのであった。自分の今迄の経験によると化物屋敷に共通な恐ろしさは帰って行く時のこの気持の一つにあるような気がする。そうして人恋しく同伴の人をいつまでも引きとめて置きたい。自分の部屋以外のところで人々と一緒にいたくてならないという妙なさびしさだけである。自分は終に二階の自分の部屋で生活することをやめて三階の石垣の部屋に同室することになった。そうして半月ばかり居る間に三階の連中に異変が生じて来た。先ず池田の部屋の同居人の浜野が精神に異常を来たしはじめた。武蔵野一帯はどこを掘っても人骨だらけである。考古学上の大発見をしたと言って牛の骨か何か拾って来たのがはじめであった。犬のくわえていたものか何かであったろうそれが今度は猫の頭の骨を捜し出して来て、人間の髑髏だと主張して聞かないばかりか、その髑髏を抱いて東の部屋へ侵入してそこの窓から梧桐の葉越しにその髑髏を裏の家へ投げつけようとするのであった。