轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
佐藤春夫『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あじさい、幽香嬰女伝、化物屋敷、緑衣の少女、私の父が狸と格闘をした話、幽明、柱時計に噛まれた話。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 页
「おや、初雄君も一しょで、またどうかなさいましたか」
「いや少しへんなので、念のため一度ご覧になって置いていただこうと思いましてね」
「時々お目にかかれるのはいいが、また痛い思いをおさせするのはいやですからな」
と云いながら旧友は、我々を待合室の方へ請じ入れると、先客の老夫人は自分を先生の知友と看て取ったせいか、眼にあてていた布をちょっとはずして一目我々の方を見やってから、しずかに立ち、軽い一礼で我々に会釈して、先ず長椅子の片脇ににじり寄り、それから脱ぎすてたのをたたんで小脇に置いてあったカーキ色の軍服地みたいな厚いコートを取り上げて膝の上に置きなおして、我々のための座席を設けて、
「お坊ちゃま、さあどうぞ」
と云ったきり、我々がそのとなりに腰をおろした時には、ふたたび布を眼に押しあてて、すすり泣きしているかのように思えた。目もとは布につつまれてよくは判らないが、色白で鼻すじのとおった美しい輪郭の横顔で、やや派手すぎるかと見える亀甲の少しくたびれた大島紬の対を着ている肩は、まだ年のせいというほどでもあるまいに、すっかり肉が落ちて見る目にも気の毒にさびしい。