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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
佐藤春夫『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あじさい、幽香嬰女伝、化物屋敷、緑衣の少女、私の父が狸と格闘をした話、幽明、柱時計に噛まれた話。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 页
わたしはあきらめてしまって、彼の打つにまかせているが、それでも夜半に二十四もたてつづけに打つ時には、近所の手前も悪いし、それに第一少しばかり気味悪くもあります。
或る日、客が来ている時にあいつは十三時を打ちました。わたしは困ってしまって説明をしたのです。
客よ、おどろくな
十三時だ! 時には
二十三時も打つ
だが針を見ろ十一時だ
このキテレツな時計こそ
部屋の主とおんなじだ
かんじょうは出鱈目の
メチャクチャだが
理性の針は正しいよ
別の或る日の事でした。やっぱり客が来ていました。あいつはこの日いつの間にかサボって止っていたのです。そこでわたしは客との話がとぎれた時、客に時間を聞いて、いきなり椅子の上に立ちあがりあいつにぜんまいを巻き始めました。それから客に対して、それが半気違いのダダイストだということを手短かに説明しました。というのはあいつはぜんまいの強い時にはきっと二十四を二度もつづけて打つ癖があるからです。彼のそういう無作法を――全く世に有るべからざる無作法を、前以て客に謝して置くが主人たるものの義務だとわたしは考えたからです。わたしは話つつねじをかけました。