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だまされたむすめとちょうのはなし

だまされた娘とちょうの話

小川 未明

「小学六年生 4巻2号」1951(昭和26)年5月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,555 字 · 9 页

青空文庫

「ねえ、おねえちゃん、なにを考えているの。なにかおもしろいお話を聞かしてくれない。」と、そばにねている少年は弱々しい声で、人なつこくいいました。

もう、長く入院しているので、少年はやせて、年よりも幼く見えるので、かの女には、いじらしかったのでした。

「坊ちゃん、さびしいの。」と、お竹は顔を寄せるようにして、聞きました。

「もう、おねえちゃんがいるから、ぼく、さびしくないよ。」と、少年は、さもはずかしそうにして答えたのです。

「私は、坊ちゃんが、よくおなおりなさるまで、どこへもいきませんよ。」

こういうと、少年は、脊椎カリエスで、とうてい助かる見込みがないと、回診の医者はいっていました。

同じ場所で、おとなにも気の毒な患者がいました。別に付き添いがいないので、不自由するのを見ると、お竹は、そんな人には、できるだけのしんせつをしたのでした。便所へつれていったり、また夜中にまくらの氷をとりかえてやったりしました。なかには、

「じょうぶなときとちがい、こんなからだになって、ひとさまから、やさしくしてもらいますと、ありがたくて、ほんとうに恩にきますよ。」と、手を合わさんばかりにするものもありました。