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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
谷崎潤一郎『ちくま日本文学014 谷崎潤一郎』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春琴抄、吉野葛。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,196 字 · 169 页
そして最後に、夜食の膳に載っていた熊野鯖と云うものが非常に美味であったこと。それは熊野浦で獲れた鯖を、笹の葉に刺して山越しで売りに来るのであるが、途中、五六日か一週間ほどのあいだに、自然に風化されて乾物になる、時には狐にその鯖の身を浚われることがある、と云う話を聞いたこと。―――などである。
翌朝、津村と私とは相談の上、ようやくめいめいが別箇行動を取ることに定めた。津村は自分の大切な問題を提げて、話をまとめて貰うように昆布家の人々を説き伏せる。私はその間ここにいては邪魔になるから、例の小説の資料を採訪すべく、五六日の予定で更に深く吉野川の源流地方を究めて来る。第一日は国栖を発し、東川村に後亀山天皇の皇子小倉宮の御墓を弔い、五社峠を経て川上の荘に入り、柏木に至って一泊。第二日は伯母ヶ峰峠を越えて北山の荘河合に一泊。第三日は自天王の御所跡である小橡の竜泉寺、北山宮の御墓等に詣で、大台ヶ原山に登り山中に一泊。第四日は五色温泉を経て三の公の峡谷を探り、もし行けたらば八幡平、隠し平までも見届けて、木樵りの小屋にでも泊めて貰うか、入の波まで出て来て泊まる。第五日は入の波から再び柏木に戻り、その日のうちか翌日に国栖へ帰る。