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どこかでよぶような

どこかで呼ぶような

小川 未明

「幼年クラブ」1949(昭和24)年5月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,361 字 · 7 页

青空文庫

」と、おじさんは、いいました。

ああ、それで、町へはいったときに、おじさんは、かけていた、黒い眼鏡をはずしたのだなと、わたくしは、思いました。そして、ほんとに妹の身をあんずる、兄の心持ちがわかるような気がして、まぶたがあつくなりました。

「どれ、おそくなるから、もう、もどるとしようね。」

おじさんはそういって、車をまた、きたときの道へとかえしました。

まだ、あちらへ露店がつづいて、いけば、にぎやかなところがあるような気がしました。そして、うす緑色の空の下、どこか遠くの方で、かなしい、ほそい声がして、わたくしたちをよぶようにもきこえました。

わたくしは、車の走る道すがら、焼けあとを見わたして、あのおそろしかった、空襲の夜を思いおこし、火の海の中を、うろついたであろう、少女のすがたを想像して、どうか、たっしゃであって、このやさしいにいさんと、早くめぐりあうようにと、心で祈ったのでした。