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どこかでよぶような

どこかで呼ぶような

小川 未明

「幼年クラブ」1949(昭和24)年5月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,361 字 · 7 页

青空文庫

運動場の水たまりに、白い雲のかげがうつる秋のころでした。彼の家がひっこすので、転校しなければならぬといって、みんなに別れをつげました。その後、わたくしは、ときどき、鈴木くんのことを思いだしたが、いま、そのすがたを見るのです。彼は新しいぼうしをかぶり、手に、大きな買い物のつつみをかかえていました。そして、なんとなく、幸福そうでした。

「きっと、おとうさんがぶじに帰られたのだろう。」

わたくしは、どうか、そうであってくれればいいと思いました。じき、彼のすがたは、人ごみの中にまぎれて、見えなくなりました。

「おじさんは、戦争へは、いかなかったの。」と、わたくしは、聞きました。

「いかぬことがあるものか、六年近くもいって、やっと、このあいだ帰ってきたのさ。るすに家は焼け、親類にあずけておいた妹は、ゆくえがわからなくなって、かわいそうだよ。」

おじさんの声は、かすれました。

「かわいそうだね、まだ小さかったの。」

「でかけるとき、たしか十一ぐらいにしかならぬから、ぶじでいてくれれば、いま十七になるはずだ。だから、ずいぶん大きくなって、ちょっとあっても、こちらではわかるまいが、おれのほうは、そうかわるまいから、妹が見つければ、わかるにちがいない。