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なつかしまれたひと

なつかしまれた人

小川 未明

「童話」1926(大正15)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,245 字 · 11 页

青空文庫

「おじいさんの生まれた国は、どこですか。」といって、聞いたものがあります。けれど、おじいさんは、答えずに、ただ遠い国だとばかりいっていました。

また、おじいさんには子供や、身頼りのものがいるかしらんと、そのことを聞いたものもあります。すると、おじいさんは、さびしく笑いながら、

「やはり、おまえさんくらいな、いいせがれがあるが……。」と、答えたのでした。

そんないいせがれがあるのに、どうして、こんないいおじいさんが旅へ出ているのだろう、なぜ親と子がいっしょに暮らすことができないのか……。おじいさんは、この年になって、自分の故郷を離れていたら、さびしかろうと思ったものもありました。

「おじいさんは、なぜこうして旅へなど出ているんですか。」と、若者の中の、一人は、その理由を知りたいと思って問いました。

おじいさんは、自分の身の上のことについては、なにを聞かれても、ただ笑顔を見せて、あまり語らなかったのであるが、

「自分の手足がきいて、働かれる間は、だれの世話にもなりたくないと思ってな……。子供たちのそばにいて働いたのでは、子供たちが、心配すると思って、それで旅へ出てきたのだ。