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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
後の世々までも儂の夢を伝えて下され。あれはもはや儂には遠く過ぎ去った前世の夢なのじゃ。儂に代ってあの美しい夢を夢みて下され。……あれは儂等には分らぬ天の声まで耳ざとく聴き分ける娘じゃ。あれが雨が降る、と云えば立ちどころに雨が降って来る。風が吹くと云えば、立ちどころに風が吹いて来る。あれは天女なのじゃ。月の都からこの世に送られてきた天女なのじゃ。なよたけを愛するとなればこの儂の話を信じて下さらねばなりませぬぞ。あれを人の世の女として愛してはなりませぬぞ。あれはいつの日にか月の都へ帰らねばなりませぬのじゃ。人の世のなべてのものに望みを失った時、天人達はあれを月の都に呼び戻すのじゃ。……それは、もち月のかがやく美しい夜じゃ。天人達は、空を飛ぶ月の車に乗ってこの現し世に舞い下りて来るのじゃ。天の羽衣を持ってこの現し世に舞い下りて来るのじゃ。
文麻呂 お爺さん!
合唱
げにうつし世は 夢ならむ
げにうつし世は 夢ならむ
何事もみな 思い出の
伝えは遠き 竹の里の
いつの名残りをとどめてや
いつの名残りをとどめてや
これやこの 遥けくも古りにし伝え
跡や残るらむ 跡や残るらむ