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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

不可思議な楽音、高調し、白色光の光芒はあたりに異様に充ち溢れて……

静かに幕――

第五幕(終幕)

東国のある丘陵地帯にある石ノ上ノ綾麻呂の任地。約二ヶ月後の七月初旬。

幕が上ると、場面は緑の丘陵が遠々と拡がっている、例えば相模ノ国のある風景。

舞台左手は小高い丘。右手にかけて、なだらかな傾斜が続いている。

丘の頂上には、雑木の丸太で作った粗末な掛台がひとつ。石ノ上ノ綾麻呂がその上に腰を掛けて、前方右手の方を遠く放心したように眺めている。雨雲が晴れる前の、何やら落着かぬ雲行である。

丘の向う側より、瓜生ノ衛門現れ、舞台右手に立つ。

衛門 旦那様。お独りで何をしていらっしゃるのです。

綾麻呂 おう。衛門か?………む、待っているのだ。……長いこと、鬱陶しく蔽いかぶさっていたこの梅雨雲が今日こそは晴れるのではないかと思ってな。……待っているのだ。

衛門 晴れそうでございますか?

綾麻呂 晴れそうだ。昨日から雨も止んでしまったし、この分ではもう梅雨は終りだ。もうすぐ晴れるのではないかと思う。……(雲行を見ている)

間――

衛門 (丘の上に上って行きながら)それにしても、駿河の国にあると云う山が、ここからそんなにはっきりと見えるものでしょうか?