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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
文麻呂、無言で丘の上に上って行く。
衛門 (文麻呂の言葉に触れて、何やら理由の分らぬ爽朗の気が身内に溢れて来た。……)旦那様!……それでは手前は失礼致して……
綾麻呂 ああ、行っておいで!……まあ、ひとつ精を出して、立派な瓜畠を作ってくれるのだな!
衛門 (剽軽に)かしこまりましてございます!
衛門、右手奥へ退場。綾麻呂は笑いながらその後姿を見送っている。
綾麻呂 なあ、文麻呂。……衛門の奴はこの東路の果に来てまでも、瓜を作る積りなのだそうじゃ。この東国が瓜で一杯になるまでふやしてみせますぞと、いやもう大した意気込なのだ。……面白い奴だよ。……この年になっては家内を貰っても子供の出来る見込みがないから、その代りに瓜を嫌になるほど育ててみせる積りですじゃと、そう儂に云うとった。
文麻呂 (これも明るい微笑で、丘の上から衛門の後姿を見送っている)
間――
綾麻呂 文麻呂。……まあ、ここへ、ひとつ、坐らんか?
文麻呂 ええ。
二人、並んで掛台に腰を下ろす。父は何やら気まずい。
綾麻呂 どうだ、相模の国は気に入ったか?
文麻呂 ええ。
綾麻呂 お父さんはな、……お前がここへやって来たことを、とても喜んでいる。