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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
文麻呂 そうですか。
綾麻呂 お父さんだって、実を云えば、お前をたったひとり都へ残しておきたくはなかったのだ。
文麻呂 ………
綾麻呂 お前がどうして都を離れる気になったか、そんなことは儂は決して詮索する気持はない。……だが、いったん、この東国に来た以上はもう絶対に都の生活なぞに未練を感ずるようなことがあってはいけないよ。この東国は厳しい試煉の土地だ。……都の人間達のようなあんな惰弱な気持ではとても生きては行けないのだ。
文麻呂 ………
綾麻呂 お前にも追々分って来るだろうと思うが、ここでは人間はのらりくらりと遊び暮して行くわけにはゆかない。飯を食おうと思えば、畠へ出て血の汗を流して米を作らなければならないし、烈しい雨風とも戦わねばならない。あるいは、憎むべき不逞の賊どもがいついかなる場合に我々に刃向って来るかも分らないのだ。
文麻呂 ………
綾麻呂 お前はこれからはこの厳しい生活に耐える強い人間にならなければいけないんだぞ。
文麻呂 (黙って頷く)
間――
綾麻呂 (しんみりと)儂は前からお前は本当に可哀想な奴だと思っていた。……幼いうちから、お母さんにも死別れて、儂のような無骨な父親の手ひとつに育てられて来た。