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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
その豊かにたれた直衣の裾は烈しくも風にはためいている。不穏な竹林のざわめき。………
文麻呂 (丘の上の友の姿を認め)おい! 清原!……どうした!
清原 (泣かんばかりの悲痛な声で)石ノ上!………駄目だ、僕は。……僕はなよたけを怒らしてしまった。なよたけは怒って家の中に駆け込んでしまった。………
文麻呂は身も軽々と丘の上に駆け上り、清原ノ秀臣の手をしっかりと握りしめる。風にはためく二人の直衣の裾。……風の音。竹林の烈しいざわめき。
文麻呂 元気を出せ! 清原! 元気を出すんだ! なよたけと貴様の恋は死んでもこの俺が成就させるぞ!……親父の名誉にかけて俺は誓う!
清原 石ノ上、有難う。……だけど、僕はもう駄目だ。……なよたけは本当に怒ってしまったんだ。………
文麻呂 何が駄目だ! おい、しっかりしろ! 勇気を出すんだ! そんなことでへなへな気が挫けるようでどうする。……戦いはこれからだぞ。清原! 貴様の恋敵が分った! 貴様の恋敵だ! 誰だと思う?
清原 恋敵?
文麻呂 そうさ、清原。……貴様の手からなよたけを奪いとろうとしている憎むべき男がひとりいるのだ。
清原 (その言葉にきっとなり、………むしろ傲然と)それは誰だ!