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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
身も心もすっかり神がのりうつっている頃なのでしょう。あのまま山へ入って行って魂ごいをすると、隠れた人達の魂が、あのように応えかえすのだそうです。
男8 (気味悪そうに)一体、どこの山へ行くのでしょうね?
男6 さあ、何でも衣笠山あたりへ行って三日間ほど山籠りをするのだと云ってましたが、……
女2 あら。中御門の方へ曲って行きますわ。皆さん、御一緒に後をつけて行ってみませんこと? (女3を誘う)ねえ、行ってみましょうよ。
女3 行ってみようかしら。
数人の男女、右手奥へ退場。
験者達の呼ばい声、鈴の音はだんだんと遠のいて行く。……
男9 (残っている人達に呼びかけるように)本当に、皆さん、お祭り騒ぎに油断をして、物忌を怠らないように注意しないと、大変な目に遭いますよ。ことにあなた方お若い御婦人達は……
女5 あら、あたし達は大丈夫ですわ。みんなこうして、一人残らず、ちゃあんと葵の鬘と蘰をつけておりますもの。(仲間の女に同意を求め)ねえ?
男9 (笑って)いや、冗談です。冗談ですよ。……
誰も気が付かぬ間に、左端にふと、石ノ上ノ文麻呂が現れた。
揉烏帽子を被り、いかにもみすぼらしい下人の装束で、立っている。