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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
私は東国の任地に赴き、武を練り、人格を磨いて、立派な武人となる。そうして、いつの日にか二人がまたこの地で相まみえる時があるとすれば、その時こそ、大伴ノ御行は必ずや地下人かさもなければ、それ以下の庶民にまで失墜するであろう。………(中央を向き、感慨深く)ああ、平安の都もどうやらこれでしばらくは見納めなのだな。………さて、いつまでぐずぐずしていてもきりがない。では、文麻呂、儂は出掛ける!
文麻呂 じゃ、お父さん! お気をつけて!
綾麻呂 お母さんのお墓参りだけは決して欠かさないようにしなさいよ! じゃ、元気で勉強しなさい! それから、瓜生ノ衛門だが、あれはもうだいぶ年をとってしまったから、あまり役には立たんだろうが、ま、よく面倒をみておやりなさい。あれだけはいつも変らぬ我々の忠実な従僕だ。ああ、忘れていた。これ。万葉集………
文麻呂 いえ、それはお父さんに差上げます。僕はもう一冊持っていますから。東国の任地などでしみじみとお読みになるにはこれほどよい書物はありません。
綾麻呂 そうか。それでは記念にひとつ貰っておこう。これはなかなかよさそうな本だから、お父さんもじっくり読んでみることにしよう。