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ねずみとバケツのはなし
ねずみとバケツの話
小川 未明
「赤い鳥」1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,785 字 · 8 页
私は、すぐにここから出ますから。」といって、ねずみはバケツの外へ飛び出して、
「ときにバケツさん、昔、あなたといっしょであった柄杓さんは、どうしましたか。」とききました。
「あの柄杓ですか。あれは、私よりも、もっと早く、あまり体を使いすぎたために、頭がとれて役にたたなくなってしまいました。人間は、そうなると、まことに冷酷なものです。その朝、柄杓をどこかへ捨ててしまいました。しかし、ひとごとでありません。私がそうなるのも近いうちです。」と、バケツは、まったく前の元気はなく、悲しそうにいいました。
ねずみは、自分にしんせつであった柄杓の最後をきいて、胸がいっぱいになって、ものをいうことすらできませんでした。
そのとき、なんともいえぬ甘そうなにおいが、どこからかしてきました。ねずみは急に鼻をひくひくさせました。
「あのうまそうなにおいは、どこからするのだろう。」と、あちこち見まわしはじめたのです。
「ねずみさん、油断をしてはいけません。昨日の昼間、人間がねずみとり薬を食べ物の中へいれて、その辺にまいたようですから……。」と、バケツはいいました。
「ありがとう……。