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はたしじょう
はたし状
山本 周五郎
「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页
かれらの多くは、町の職人にも及ばない僅かな扶持しか貰えなかった。しかもその境遇をぬけだすことは殆んど不可能であった。
――日向に生える木もあれば日蔭に生える草もあります。私どもはこういう運に生れついたのですから、……生れついた運というものは人間の力ではどうなるものでもございませんから。
かれらはたいていこう諦めていた。病気や思わぬ災難に遭ったらどうするか。始末のできる者は無理をしてもするが、できない者はなりゆきに任せるよりしかたがなかった。
――治る病気なら薬を飲まなくとも治るでしょうし、治らないものなら……。
こう云って苦笑するか、首を振るかする。この世は自分たちのためにつくられているわけではない、世の中にはもっと不幸な者、乞食になるとか、餓える者さえたくさんいる。自分たちが家族そろって、どうやら喰べてゆけるのはみな殿さまの御恩である。それだけでも有難いと思わなければならない。……かれらは殆んど口を合わせたように云った。それを聞いて第二は幾たび怒り、幾たび呪詛したかしれなかった。世間の機構の不公正に対して、人間の狡猾と冷酷無情に対して……。
――だが、それならどうしたらいいのか。