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はたしじょう
はたし状
山本 周五郎
「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页
意味があったわけである。
父には母から話して貰った。父は渋い顔をしたそうである。ほかに縁談もあったらしい。また和田軍兵衛は母の兄で、しのと第二とは従兄妹に当る関係から、血が重なりすぎるとも云ったが、結局、それほど熱心なら、と折れて呉れたということであった。
和田へも母がいった。江戸へ立つ日が迫っているので、正式の儀礼はあとのことにし、内輪で話だけ定めようということだった。もちろん和田に異存はなく、出立する二日まえに内祝の盃を交わした。第二は藤島英之助と八木千久馬を呼びたかった。しかし二人だけ特に招くというのは穏当でない。父も母もそう反対し、両家の親たちだけ列席して、ほんのかたちだけの盃をした。……そのときのしのは美しかった。縹緻や姿は妹のみよのほうがたちまさっている、姉のしのは背丈も低いほうだし、胸や腰のあたりも細く、顔つきなどにどこかしら育ちきらないような感じがあった。けれどもその日は髪かたちや化粧のせいだろうか、――もちろん正装ではなかったが、――それとも婚約の盃をするという気持の張りのためか、いつもの子供っぽさはなく、表情や身振りなど、ちょっと嬌めかしいくらい冴えた美しさにあふれていた。