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はたしじょう

はたし状

山本 周五郎

「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页

青空文庫

、第3水準1-86-44)川の河原へ下りてゆき、枯れた草の上へ身を投げだした。……鎮まっていた怒りが再び燃えあがってきた。古い傷がなまなましく痛みだした。肥えて、どこかに重厚さを加えた英之助の、馬上から見おろした顔が、眼に焼付いているようであった。

「せめてあの事には触れないでいて呉れるべきだ」

第二は呻くように云った。

「少しでも感情をもっていたら、あの事だけは口にはできない筈ではないか、彼は自分たちを弁護しようとさえした、しのがどんなに苦しんだかって……ではおれはどうなんだ」

すぐ側で冷たそうに瀬の音がし、仰臥した彼の上へあとからあとから落葉が散って来た。

八木千久馬に会ったのは、それからほんの数日後のことであった。誰が訪ねて来ても会わないし、招かれても断わるので、友人や元の同僚たちとは没交渉のままだったが、千久馬だけは辛抱づよく訪ねて来た。

――母さんが間へはいって困るから。

母が困って頼むように云ったこともある。けれども第二は頑として会わなかった。手紙を置いてゆくこともあったが、初めの一通を半ばまで読んだだけで、あとはそのまま手箱へ入れてしまった。