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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页
「そんなんじゃないの」とおようは髪へ手をやりながら云った、「泊るときはいつもその姉さんという人に抱かれて寝たんだけれど、あとで考えるとその人ませてたのね、あたしはなんにも知らないから、ただ可愛がられてるんだとばかり思っていたのよ」
「だって、そうじゃなかったんですか」
「可愛がられていたことはいたの、その人も可愛いという気持だったんだろうけれど、いっしょに寝ることがたび重なるうちに、――そうよ、あの人ませていたんだわ」
「たび重なるうちにどうしたんですか」
「いやだわそんなこと、口で云えやしないわ」とおようは話をそらした、「それからあたし怖くなって、遊びにいっても決して泊らなくなったし、姉さんという人もはなれるようになっていったの、それから三年ばかりして、その人は十八でお嫁にいったけれど、子供を一人産んで亡くなったわ、お産のあとですぐに亡くなったんですって、きれいな人だったわ」
おつねは櫛を置き、半身を反らせて眺めながら、どうでしょうかと訊いた。おようは両手をあげ、つかね髪にした頭に触ってみた。袖が捲れて、両の肘があらわれ、きめのこまかな、白い、脂ののった