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ひとでなし

ひとでなし

山本 周五郎

「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页

青空文庫

ものと思ってるからだ、もしかして生きてるかもしれないという疑いが、これっぽっちでもあったら、決しておように手だしなんぞする人間じゃあねえ、そうだ、おれたちのしまぬけはやっぱりうまくいったんだ」

「うまくいかなかったとでも思ってたのか」吉の字と呼ばれた男が云った、「もう三年もまえのこったぜ、品川へあがった二つの死骸が、おれとおまえだと認められたことは、あのときちゃんとわかってたじゃあねえか」

「おめえはものを考えねえからな」と痩せた男が云った、「さあいってくれ、ふるまいが終ったら女を呼びだして来るんだ」

「津ノ正というのをどうする」

「女をこっちへ取ってからの話だ」と痩せた男はさも面白そうに云った、「おようのためなら、あいつはどんなことでもするからな、おれたちはいい旅ができるぜ」

吉の字と呼ばれた男は立ちあがった、「おれはどうも気がすすまねえ、おめえは少し頭が切れすぎる、おめえは相棒には向かねえ人間だ、すみのやつだってわけを聞けば首を振るかもしれねえぜ」

痩せた男はくすっと笑った。吉の字と呼ばれる男は急におどかされでもしたように、くいと振向いて、暗がりのそこにいる