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ひとでなし

ひとでなし

山本 周五郎

「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页

青空文庫

「悪党っていうより人でなしだわ」とおようは続けた、「お父っさんが死ぬとすぐに道楽が始まった、酒こそ一滴も飲まなかったけれど、博奕と、女、うちの店をつぶし、あたしを裸にして博奕と女、――あたし自分にも悪いところがあるんだろうと思って、ずいぶん辛抱しました、きっとあたしにも悪いところがあったんでしょう、男というものは、誰でもいちどは道楽をするっていうから、あたし、泣き泣き辛抱していたんです」

「そうだ、云ってしまえ」と彼はおように酌をしてやった、「みんな云ってしまうがいい、そしてさっぱりするんだ」

「こんなこと、初めて云うんだけれど、いちどなんかあたしの躯を、人に売ろうとしたことがあるんですからね」

「おまえの躯を、人に売るって」

「博奕のかたにしたんですって」とおようはきれいに飲んで云った、「あたし死のうと思って庖丁を持ちだしました、そのまえにも、それからあとでも、死のうと思ったことはたびたびあるけれど、そのときこそ死ぬつもりだったんでしょう、そう聞くなり勝手へいって庖丁を持ったんです」

「なんというやつだ」と彼は呻いた、「なんというひどい