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ふるさとによするさんか
ふるさとに寄する讃歌
夢の総量は空気であった
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,184 字 · 13 页
私は蒼空を見た。蒼空は私に泌みた。私は瑠璃色の波に噎ぶ。私は蒼空の中を泳いだ。そして私は、もはや透明な波でしかなかった。私は磯の音を脊髄にきいた。単調なリズムは、其処から、鈍い蠕動を空へ撒いた。
私は窶れていた。夏の太陽は狂暴な奔流で鋭く私を刺し貫いた。その度に私の身体は、だらしなく砂の中へ舞い落ちる靄のようであった。私は、私の持つ抵抗力を、もはや意識することがなかった。そして私は、強烈な熱である光の奔流を、私の胎内に、それが私の肉であるように感じていた。
白い燈台があった。三角のシャッポを被っていた。ピカピカの海へ白日の夢を流していた。古い思い出の匂がした。佐渡通いの船が一塊の煙を空へ落した。海岸には高い砂丘がつづいていた。冬にシベリヤの風を防ぐために、砂丘の腹は茱萸藪だった。日盛りに、螽が酔いどれていた。頂上から町の方へは、蝉の鳴き泌む松林が頭をゆすぶって流れた。私は茱萸藪の中に佇んでいた。
その頃、私は、恰度砂丘の望楼に似ていた。四方に展かれた望楼の窓から、風景が――色彩が、匂が、音が、流れてきた。私は疲れていた。私の中に私がなかった。私はものを考えなかった。