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ふるさとによするさんか
ふるさとに寄する讃歌
夢の総量は空気であった
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,184 字 · 13 页
何一つ手に握ることができなかった。そして何物も掴まぬうちに、もはや求めるものがなくなっていた。私は悲しかった。しかし、悲しさを掴むためにも、また私は失敗した。悲しみにも、また実感が乏しかった。私は漠然と、拡がりゆく空しさのみを感じつづけた。涯もない空しさの中に、赤い太陽が登り、それが落ちて、夜を運んだ。そういう日が、毎日つづいた。
何か求めるものはないか?
私は探した。いたずらに、熱狂する自分の体臭を感ずるばかりだった。私は思い出を掘り返した。そして或日、思い出の一番奥にたたみこまれた、埃まみれな一つの面影を探り当てた。それは一人の少女だった。それは私の故郷に住んでいた。辛うじて、一、二度、言葉を交した記憶があった。私が故郷を去って以来――十年近く、会うことがなかった。今は生死も分らなかった。而し、掘り出した埃まみれな面影は、不思議に生き生きと息づいていた。日数えて、私は、その面影の生気と、私自身の生気とに区別がつかなくなっていた。私は追われるように旅に出た。煤煙に、頬がくろずんでいた。
私はふるさとに帰りついた。
ふるさとに、私の生家はもう無かった。