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まかないのぼう

まかないの棒

黒島 伝治

1923(大正12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,538 字 · 10 页

青空文庫

桃桶で汲む諸味の量が多いとか、少いとか、やかましく云った。

すると、古江も図に乗って、仁助と同じように小言を並べた。

「おーい、やろか。」

三十分のタバコがすむと、仁助は事務所から出て来て、労働者にそれぞれ仕事を命じた。仕事はいろいろあった。そして京一にはどれも、これも勝手が分らなかった。器具だけでも沢山あって、容易にその名前を覚えられなかった。コキン、コガ、スマシ、圧し棒、枕……こんな風に変な名前がいくらでもあった。枕といっても、勿論、寝る時に使うそれではなかった。

五六人も揃って同じ仕事をする場合には仕事に慣れた古江は若い者を、鞭で追いまわすようにひどいめに合わした。古江は手早く仕事をする。他の者もそれに負けまいと力を出す。古江がなお手早くやる。他の者は力いっぱいに働いてついて行く。……そして、次のタバコまでに、皆は結局散々コキ使われたことになって、へとへとに疲れてしまう。なかでも脆弱な京一が一番ひどく困らされるのだった。

「何んにも出来ん者が、他人と一と並に休みよってどうなるもんでえ!…………休むひまに、道具の名前一つでも覚えるようにせい!」

仁助は、片隅でぐったりしている京一にごつごつ云った。