轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むかでのあしおと
むかでの跫音
大倉 燁子
「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页
「そういう血統はないはずなんですけれど――。やはり一時的発狂――、まあそうなんだろうと、皆も申して居ますが――」
「左様――、そうしておいた方がいいでしょう。殺されたなんて云うとうるさいですからな」
「え? 殺されたんですって?」
「殺されたと云えば、殺されたとも云えましょう――」
「まあ! 誰にですの?」と私は固唾を呑んだ。
彼は平然として云った。
「人間じゃありません」
「人間じゃない。と仰しゃいますと、一体、それは何でございますの?」
呆気に取られてぽかんとしている私の顔を彼は流し目に見やりながら、すまして答えるのだ。
「形があるものじゃありません。つまり見えざる影、――いや、幻とでも云いますかな」
「へえ、幻に――」
変な話だ、幻に殺された。そんな馬鹿な事があって堪るものか。私は可笑しさが込み上げて来るのを耐えながら、相手の方を見ると、いかにも真面目な顔をしているので私は笑を忍んで、
「不思議なお話でございます。――でも私なんかにはどうもそういうことは信じられませんが――」と云った。
先生はただ唇の辺りに意味あり気な微笑を浮べたぎり、口を噤んでいる。
車内の客と云えば先生と私と、その他四五人の男女があっち、こっちに散らばって腰かけているだけで、何となく淋しかった。